無人機調達3年間の全記録——145件・3,338億円は誰が受注したか

無人機は防衛産業の成長領域だと言われる。ドローン、無人潜水艇、無人水上艇。スタートアップの参入余地が最も大きい分野としても語られる。

では実際に、いくらの契約が、どの企業に流れたのか。

防衛装備庁の契約データ39ヶ月分(2023年4月〜2026年6月・22,392件)から、契約件名に無人機・UAV・UUV・USV・ドローン・無操縦者を含むものを抽出した。145件・3,338億円・54社。 その全体像を示す。

金額は増えていない

まず、意外な結果から。

年度件数金額
令和5年度52件1,187億円
令和6年度51件1,233億円
令和7年度42件918億円

3年間ほぼ横ばい、直近はむしろ減少している。 防衛費全体が増額される中で、無人機調達額は伸びていない。

ただし注意が必要で、この期間には研究試作の大型契約が複数含まれる。管制型試験UUVの研究試作(262億円、2023年11月)、戦闘支援型多目的USVの研究試作(248億円、2025年3月)など、単年で計上される開発費が金額を左右している。量産段階に入れば数字の性格は変わる可能性がある。

領域別の内訳

領域件数金額
航空(UAV・ドローン)121件2,214億円
水中(UUV)17件877億円
水上(USV)6件442億円

件数では航空が圧倒的だが、1件あたりの金額は水中・水上のほうが大きい。 UUVは1件平均51.6億円、USVは73.6億円。航空系は18.3億円である。

上位案件

契約金額受注者方式
滞空型UAV(シーガーディアン)414.0億円双日随意契約
水中無人機 OZZ-100371.8億円IHI競争入札
管制型試験UUVの研究試作262.1億円三菱重工業随意契約
戦闘支援型多目的USVの研究試作247.9億円三菱重工業随意契約
無人水陸両用車205.9億円三菱重工業随意契約
滞空型無人機の後方支援(CLS)178.3億円米空軍省随意契約(FMS)
USV(供試器材)152.3億円三井物産エアロスペース随意契約

最大案件のシーガーディアンは、米General Atomics製の機体を双日が輸入代理している。 2位のOZZ-100はIHI製で、これは競争入札だった。

受注企業

順位企業金額件数
1三菱重工業1,054.4億円19件
2双日607.2億円7件
3米空軍省(FMS)529.5億円7件
4IHI396.1億円4件
5日立製作所189.4億円8件
6三井物産エアロスペース152.3億円1件
7住商エアロシステム57.9億円7件
8日本電気57.5億円2件
9富士通55.4億円3件
10丸紅エアロスペース41.3億円3件

上位10社で金額の94%を占める。 防衛産業全体の集中構造(上位10社で73%)よりも、無人機領域のほうが集中している。

そして注目すべきは、双日、三井物産エアロスペース、住商エアロシステム、丸紅エアロスペース、伊藤忠アビエーションといった商社系が上位に並ぶことである。これらを合計すると858億円、全体の26%になる。

つまり無人機調達の4分の1は、海外製機体の輸入代理である。国内メーカーの受注ではない。

競争入札は15%

契約方式の内訳はこうなる。

方式件数金額金額シェア
競争入札49件519.5億円15.6%
随意契約96件2,818.2億円84.4%

防衛調達全体では競争入札が金額の2%程度なので、無人機領域は競争が成立している比率が高い。 歴史の浅い領域には既存の製造図書による独占が存在しないためと考えられる。

件数では49件が競争入札であり、新規参入を狙うなら、この49件がどういう案件だったかを見る価値がある。

中小・スタートアップの位置

上位に並ぶのは大手ばかりだが、54社の中には小規模な企業も含まれる。日本特装は14件・29.6億円で、件数では上位に入る。前稿で新規参入と確認した株式会社ハマ(UAV狭域用JDXS-H1-C、12.5億円)、Terra Drone(モジュール型UAV教育用、1.2億円)もこの領域である。

新規参入がまとまって発生している唯一の領域が無人機であることは、前稿の検証結果とも一致する。3年3ヶ月で装備品への新規参入が確認できた6社のうち、3社が無人機・海洋無人系だった。

ただし金額規模は桁が違う。大型案件は数百億円、新規参入企業は1〜12億円である。入口は開いているが、まだ辺縁にとどまっているというのが実態だろう。

まとめ

  1. 無人機調達は3年間で145件・3,338億円。金額は横ばいから減少
  2. 上位10社で94%を占め、全体平均より集中度が高い
  3. 商社系が26%を占め、輸入代理の比重が大きい
  4. 競争入札の比率は金額の15.6%と、防衛調達全体より高い
  5. 新規参入が最も起きている領域だが、金額規模はまだ小さい

「無人機は成長領域」という認識は、参入機会という意味では正しい。しかし調達額そのものが伸びているわけではない、というのが実データの示すところである。

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本稿について

  • 対象データ:防衛装備庁「契約に係る情報の公表(中央調達分)」2023年4月〜2026年6月分(126ファイル・22,392件)
  • 抽出条件:契約件名に「無人」「UAV」「UUV」「USV」「ドローン」「無操縦者」のいずれかを含む契約
  • 件名ベースの抽出のため、無人機の構成品や関連役務で、件名にこれらの語を含まないものは集計から漏れています
  • 集計・分類は筆者が独自に実施したものであり、防衛省・防衛装備庁の公式見解ではありません
  • 金額は契約金額であり、支出ベースとは異なります。研究試作等の開発費も契約年度に全額を計上しています
  • 本稿は防衛政策の是非を論じるものではなく、公開調達データから産業構造を観察するものです

防衛省の月次契約データを継続的に集計・分類しています。特定領域の受注動向調査や、企業別の受注実績の確認などのご相談は、下記までご連絡ください。

お問い合わせ:info@choutatsu.jp

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